著作権の基礎知識

法 律 漫 画 「名画を守れ!!」 の 巻

 

 


著作権は知的財産権のひとつ

著作権は知的財産権のひとつ


「著作権」という言葉はよく知られた言葉ですが、
著作権は「知的財産権」の一つです。


「知的財産権」と一口に言っても色々あるよ!

・著作権
・特許権
・実用新案権(考案の保護)
・意匠権(工業デザインの保護)
・商標権(マーク等の営業標識の保護)
・回路配置利用権(半導体のマスクワークの保護)
・育成者権(植物新種の保護 種苗法)
・営業秘密、類似性商品の販売規制等(不正競争防止法で保護)



著作権と特許権の違い

著作権相談の業務を受けていると
お客様から非常に聞かれることが多い質問は

「自分の作品の著作権をとりたいのですが
どうすればいいですか?」




(ちなみに文化庁への最も多い質問でもあるようです)


発明を保護する特許権は行政への登録をしないといけませんが
著作権は著作物を創作した時点で自動的に発生します
(これを無方式主義といいます)

  著作権 特許権
保護の対象 著作物(表現物)  発明
(アイディア)
保護の要件 創作性 産業上利用可能性など
権利の発生 創作
(無方式主義)
登録(方式主義)
保護
期間
原則死後70年まで 原則出願から
20年まで



著作物とは

著作物とは

著作物とは

「思想又は感情を創作的に表現したものであって
文芸、学術、美術、又は音楽の範囲に属するもの」
             (著作権法2条1項1号)


をいいます。

「創作的」とは

ここでの「創作性」とは高度なものを要しません。
お子様の作文や夏休みの宿題の絵なども
「著作物」に該当します。
※一方「特許権」は高度な創作性が必要です※



著作物の例(著作権法10条、12条)
言語の著作物
音楽の著作物
舞踊又は無言劇の著作物
美術の著作物
建築の著作物
地図、図形の著作物(模型、図面など)
映画の著作物
写真の著作物
プログラムの著作物
編集著作物(図鑑、新聞、辞書、雑誌など)
データベースの著作物

あくまでも「例」なのでこれらに当てはまらなくてもOK


 

具体的な考え方(例)

建築の著作物

建築家の名前があれば著作物になるが
設計事務所の表記であれば概ね著作物にはならないとされている。

舞踊又は無言劇の著作物

ダンサーは当てはまらない。
ダンサーは「実演家」で保護される。

著作物と認められないもの


著作物」でなければ著作権法では保護されません。
思想又は感情を創作的に「表現」したものが著作物になります。

したがってアイディアは著作権法では保護されません。
(だたしアイディアを具体的に表現すると著作物になる。
 例:料理のレシピなど)



他、著作物と認められないもの

 

・みじかい文(新聞の表題など)
・ありふれた表現
・書体のデザイン
・外見以外のキャラクター
・法律、判決文
・実用品、工業製品     等



上の漫画のような「チューリップ」は
誰が表現してもこうなる可能性が高い
「ありふれた表現」です。



従って特段の独創性が認められない限りは
(例えば花や葉の中のデザインをかなり創作的にするなど)
著作権法での保護は難しいでしょう。


ちなみに「偶然似てしまった場合」にも
著作権侵害は問題にはなりません。(例 俳句等)
著作権侵害になるためには他人の著作物にアクセスして
表現を真似したという事実が必要なのです。



「実用品」が著作物として認められる場合


著作権法の「美術の著作物」には美術工芸品も含まれます。
(著作権法2条2項)

従って博多人形や仏壇彫刻は著作権法で保護されます。

またTシャツデザインなどはTシャツとデザインに分離が
可能なために著作物性が肯定されます。

一方、自動車や電気製品のデザイン
著作物と認めれられないことが多いです。
※実用品に関するデザインは「意匠法」で保護※

著作権の内容(権利の束の著作権)

著作権の内容(権利の束の著作権)

著作権はよく「権利の束」といわれます。
その理由は以下のような性質が異なる「個別の著作権(財産権)」が
まとまって構成されているからです。

著作権の権利一覧

 

著作者人格権
公表権
氏名表示権
同一性保持権

上記の「著作者人格権」は
「著作者」だけに発生する権利です。
「著作者の人格を守るため」の権利なので
当然ですが、譲渡・相続はできません。(著作権法59条)

 

著作権(財産権)
複製権
上演権・演奏権
上映権
公衆送信権
公の伝達権
口述権
展示権
頒布権
譲渡権
貸与権
二次的著作物の創作権
二次的著作物の利用権

これらの「著作権(財産権)」は別々に取引が可能です。
(例えば複製権の譲渡だけを契約するなど)

 

著作権の保護期間

著作権の保護期間


著作権の保護期間は著作者が死後70年までです。
(無名・変名・団体名の著作物は公表後70年まで)

2018年12月30日より前は保護期間は50年でしたが
TPPの発効により2018年12月30日から延長されています。

※2018年12月30日前に著作権が消滅している場合には
 消滅した著作権は復活しません(消滅著作権の不復活)

パブリックドメインと著作者人格権


漫画にでてきた「ムンクの叫び」の置物ですが、
これは事務所代表が愛用しているペン立てです。




「叫び」の作者エドヴァルド・ムンク(1863-1944)
をはじめとする偉大な画家の作品の大多数は
著作権が消滅したパブリックドメイン(公有)のため
原則誰でも自由に使用することが可能です。

しかし、著作権が消滅しても
著作者の人格的利益は侵害してはならないため
著作者が生存しているのであれば意を害するようなレベルの改変
をすることは認められません。(著作権法60条)

他人の著作物を利用できる場合

他人の著作物を利用できる場合

 

他人の著作物を利用するには著作権者の許諾が必要です。
                 (著作権法63条1項)



しかし以下のような場合には著作物の利用ができます。


「利用規約で利用が認められている」とき

事務所代表がチラシのためにダウンロードした
フリー素材(イラスト)は利用規約の範囲で
無料で利用ができます。



「パブリックドメイン」
著作権の保護期間が終了した場合も利用が可能です。

「クリエイティブコモンズ」
ルールを守れば著作物の使用が認められるものも利用が可能です。

著作権の制限(著作物の自由利用)


また著作権法では下記のような場合にも
自由利用が認められています。

自由利用が認められる例

私的使用のための複製
教育利用のための複製
福祉利用(点字にするなど)
裁判・行政手続
引用
非営利・無料の場合の「上演」「演奏」など

(いずれも公益や社会慣行などで
著作権者の利益を不当に害することがない場合とされています)


私的利用のための複製とは・・・
個人や家族間などでの複製であれば無許可で利用可能

私的利用とはみなされない場合
・仕事に関するもの
・ネットにアップする(公衆送信権の侵害にあたる)
・友人が利用するための複製 など

引用とは・・・

引用が許される条件(以下すべてクリアする必要がある)

・公表されている著作物
・公正な慣行に合致すること
・正当な範囲内での引用
・出所を明示する
・主従関係が明確であること
・引用部分が明確であること
・引用を行う必然性があること  等


著作権の登録制度

著作権の登録制度


「著作権は取る必要がないというけれど、確か
 先輩のアーティストが著作権登録をしたとかいってたような・・・」

 

「権利発生のための登録制度はたしかにありませんが
著作権を保護するために以下の登録制度を利用できます。

 

ペンネームなどで著作物を作成した場合

実名の登録
著作権は原則著作者の「死後70年まで」保護されます。
しかしペンネームで著作物を作成した場合「作品の公表後70年」の保護期間になります。著作物を実名で登録をすると保護期間は「公表後70年」から「死後70年」になり、結果的に著作権が延長されることになります。

盗作防止のための登録

第一発行年月日等の登録
人の作品を盗作しながら、「向こうが自分の作品を盗作したのだ!」と主張される。といったことは実は珍しいことではありません。そのような理不尽を防止する場合に第一発行年月日などの登録しておけば、作成した著作物が第一に発行または公表されたと推定されるので証明しやすいです。

また法人名義での著作物において第一発行年月日等の登録を
した場合、著作権の保護期間が明確になることで
著作権取引をしやすい等のメリットがあります。

著作権や著作隣接権を譲渡したとき

著作権・著作隣接権の移転等の登録
著作権は譲渡が可能です。譲渡は単に「口頭」でもできます。
もし2重譲渡が行われてしまうと、そのままでは「自分が著作権を譲り受けた」ということを相手に主張できませんが著作権の
移転の登録をした場合、譲渡の事実を相手に主張できます。

なお、歌手や俳優などの著作隣接権についても
譲渡の登録は可能です。

出版権を設定したとき

出版権の設定等の登録
出版権とは「独占的に書籍を出版できる権利」です。
この権利を登録すると、出版権の2重譲渡がされた場合であっても他者へ「自分だけが著作物を出版できる権利がある」ことを主張できます。

 

プログラムなどを制作したとき

創作年月日の登録
プログラムやソフトウェアの作成は社内などで非公開でされる場合が多いために、争い防止に備え「先に制作した」ことを証明するための登録制度です。
※プログラムの著作物のみに認められます。
この創作年月日の登録制度は創作後6か月経過する前でないと利用が出来ないので注意が必要です。

著作権者不明等の場合

他人の著作物などを利用したくても「著作者がわからない」「著作者の相続人がわからない」などの利用で著作権者等の許諾が得られない場合に文化庁長官の裁定をうけ、補償金を支払う代わりにその著作物など利用できる制度があります。

著作権と所有権の違い(著作権契約)

著作権と所有権の違い(著作権契約)


漫画の名画(?)のチューリップが
オークションで落札された場合
落札した人が名画の所有者になります。




名画の所有者には所有権があるため
名画を転売したり、破棄したりと自由に処分できますが
著作権が譲渡されていない限りはたとえ所有者であっても
名画を白黒にしてみたり、写真を撮ってSNSにアップすること
はできません。

せっかくお気に入りの名画を手に入れたのに
なにもできないなんてつまんない・・・



もし名画をそのように利用したい場合には
著作権についての契約が必要です。

契約は口頭でも成立しますが、
「言った、言わない」のトラブル防止のために
必ず契約書を作成しましょう。

著作権の契約書の種類


著作権譲渡契約書
著作権は上にあげたように
複製権や公衆送信権など様々な個別の権利からなっております。これらの著作権はバラバラに譲渡することが出来るため、
譲渡についての契約書を作成します。
(譲渡は有償でも無償でもOK)
翻案権、二次的著作物の利用権、著作者人格権など詳細な権利関係を考慮したうえで契約書を作成します。


著作権利用許諾契約
他人の著作物を使用したいときに締結します。
その場合、どのような利用が可能か
(料金やいつまで利用できるか等)をわかるように
詳細に取り決めをしたうえで契約書を作成します。


著作権業務委託契約
イラストや音楽、映像といった著作権を
他人に制作してもらう場合の契約書です。
著作物を依頼して作成してもらった場合
著作権は作成者にあります。
従って、その後の著作物(著作権)の取り扱いを
どうするかの取り決めも細かく決めて契約書を作成します。



著作権契約書は用途に応じて
上記の他にも様々な種類のものがあります。
お気軽にご相談ください。



著作権登録、契約書、著作権相談についてはこちら




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