法 律 漫 画
「著作権、あきらめたらそこで試合終了!」の巻
非常に曖昧な著作権
非常に曖昧な著作権
著作権は専門家からしても
「侵害かどうかの線引きが難しい」非常に曖昧な権利です。
言葉は誰でも知ってるのにね。
そもそも著作権で保護するのが「思想と感情の表現されたもの」という定義づけが難しい概念であることも原因のひとつです。
日本国憲法第19条「思想・信条の自由」
よりもある意味ふんわりしてるよね。
過去の判例や事例についても
「どうみてもそっくりなのに著作権の侵害ではない」と判断されたり
「許容範囲にみえるのに著作権の侵害である」と判断されることが
度々起こっております。
著作権侵害ではないといわれた事例
(平成20年7月4日東京地裁 博士イラスト事件)
原告の絵
被告の絵
著作権侵害であるといわれた事例
(平成13年6月21日東京高裁 みずみずしいスイカ写真事件)
原告の写真
被告の写真
「博士もスイカも似ている気がするんだけど・・・」
「博士イラスト事件は「表現がありふれており、かつ色や髭や帽子のかぶり方がそれぞれちがう」という理由で著作権侵害にはなりませんでした。一方、西瓜写真事件では「スイカの配置や背景の色彩とグラデーションが共通しているし、これは元の写真がなければ似た作品にはならないだろう」という理由で著作権侵害になりました。」
著作権侵害の3要素
著作権侵害の3要素
著作権侵害には「著作物性」「依拠性」「類似性」
の3つすべて揃うことが必要といわれております。
・著作物性・・・著作物をもとに作成したのか ・依拠性・・・・既存の著作物を参考にしているのか ・類似性・・・・元の著作物の本質的な特徴が感じ取れるか |
すなわち、要約すると
「いかにオリジナルにそっくりか」で判断するのですが
中にはいまいち疑問が残る事案もあります。
漫画「ベルサイユのばら」©池田理代子プロダクションより引用
問題の絵(広報さっぽろ2018年6月号)
たしかに「絵としてのそっくり度」はいまいちね・・・
これはキャラクターの名前が原作に非常に似ていたことや
なによりも「札幌市という自治体」が堂々とパクり行為を
おこなったために問題になったのではないでしょうか。
裁判まではいっておりませんが、作者の事務所が札幌市に抗議をし、札幌市が謝罪をしております。個人でパロディーを行うのと、いち都市が行うのでは影響力が違いますからね・・・
※ちなみにマリー・アントワネットのようなキャラクターの名前は
「マナ―・シラントワネット」、オスカルのようなキャラクターの名前は
「オシカル」でした。
あの漫画の名言やポーズ
あの漫画の名言やポーズ
「あきらめたらそこで試合終了ですよ・・・?」
このセリフは人気漫画「スラムダンク」のセリフですが
「短い文章」は単体では「著作物」としては
認められません。
(「マンガで解説!著作権の基礎知識」の「著作物とは」)
ちなみにこのセリフともに
「カーネルサンダースのようなあのおじさん」を
描いたらどうなるでしょうか。
それだけでアウトという声もあるでしょうし、
アーティストによって「カーネルサンダースのようなあのおじさん」の
描き方は千差万別なために「ケースバイケース」と判断する見方もあるでしょう。
「一応太ってもいないし、おじさんでもない私が
いうのはOKかしら・・・?」
「ぜ、全然、問題ないです!!!」
ポーズについてはどうでしょう。
左の絵は、いわゆる「ジョジョ立ち」です。
(ジョジョの奇妙な冒険より)
単純に「ポーズ」を真似るのもやはり著作権侵害にはなりません。
(ポーズは著作物ではないため)
そして著作権は
「本物を模写しても全く別のものになった場合」
には侵害にはなりません。
この絵は「ジョジョ」のキャラクター「ジョナサン・ジョースター」
を真似していることを強調するために
髪型やコスチュームを似せておりますが、
服装をスーツにし髪形もおかっぱにするとセーフになります。
「そもそも原作の絵は
もっとスタイリッシュだし別物よね。」
無断転載や作品のトレース
無断転載や作品のトレース
一方「無断転載」や「他人の作品を「トレース」する」ことは
立派な著作権侵害(複製権・公衆送信権等侵害)です。
もし著作権が侵害された場合には
・差止請求 ・損害賠償請求 ・不当利得返還請求 ・謝罪広告の掲載の請求 |
などが可能です。
著作権侵害の場合の罪
著作権侵害の場合の罪
著作権侵害は原則、親告罪(被害者側の告訴が必要な罪)ですが
もし侵害をしてしまうとその罪は意外と重いです。
他人の著作権などを侵害した場合 |
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10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金 (法人が著作権侵害をした場合は3億円以下の罰金) |
他人の著作者人格権を侵害した場合 |
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5年以下の懲役又は500万円以下の罰金 |
同人誌と似顔絵と肖像権
同人誌やファンアートなどの創作活動は
本来は著作権違反に該当する可能性がかなり高いですが、公式が黙認する場合が多いので成り立っています。
似顔絵はどうなの?
似顔絵は「肖像権違反」に該当する場合があります。
ですが同人誌と同じように、黙認されていることで成り立っている部分も大きいのです。
※日本では「肖像権」を直接規制する法律はありません。(法的保護の対象にはなりますが)また写真のように精密に描写するタイプの似顔絵でない「描き手の技術で主観的に特徴をとらえた似顔絵」は肖像権に侵害しないとされております。(東京地方裁判所2002年5月28日判決)
法に触れなくても炎上には要注意
法に触れなくても炎上には要注意
作家さん同士で
「構図」、「タッチ」などをマネされたという話をよく聞きますが
残念ながら「構図」「タッチ」
これらはいずれも単体では「著作物」ではありません。
しかしたとえそれが著作権法違反にならなくても
場合によっては大炎上の可能性があります。
著作権に注意を払うことは勿論ですが
加えてトラブル防止、ご自身の防御と信用問題のためにも
用法と用量を守った創作活動をすることが肝要です。
著作権法は昨今ネット普及に伴い改正が頻繁に行われています。
プロのクリエイター集団でもある当事務所では
著作権に精通しているスタッフ(著作権相談員)が
クリエイター・アーティスト様に対して適切な著作権の利用方法や
泣きを見ない著作権契約の方法をアドバイスしております。
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